2011.4.19 |
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「Taito Style」プロジェクトレポートvol.3 「家具買い取りシステム」「太東カタログ」など賃貸住宅の新しい価値
第3回では、「家具買取システム」「太東カタログ」といったTaito Styleの魅力的なプログラムについてレポートします。
外壁が張られ、足場が取れて、完成が目前に迫るTaito Style。
■家具の買取システムがある賃貸?
以前に行ったOpen A・馬場とTaito Style・那部さんの談話をもとにお送りします。
馬場:Taito Styleプロジェクトは運営面でもいろんな変わった工夫がなされているのですが、特に面白いと思ったのは、家具の買い取りシステムです。
那部:私が元々家具好きなこともあり、家具をコンセプトとした面白いサービスができないかと考えたんです。
ここを借りる人はセカンドハウスとして借りてくれる人が多いと思うのですが、その家を借りるために新たに家具を買わなきゃいけない。けれど出ていくときは不要になる。でもいい家具だったら、そのまま置いていって欲しいぐらいです。また家主としては、借りて住んでくれる人にはできるだけ長くいてもらいたい。長く住むことで得するようなシステムにしたいと思ったんです。そこで、年を追う毎に家具の買い取り価格を上げていくという方法を思いついたんです。
無垢材で作られた上質な家具。太東カタログに載っているこれらの家具を退去時に買い取ってくれます。
馬場:まずTaito Styleの入居者には、那部さんイチオシ家具を掲載する「太東カタログ」が入居時に入居者にはプレゼントされるんですよね。
太東カタログは入居者にもれなくプレゼント! 見ているだけでも楽しめます。
那部:IKEAのように安くていい家具もありますが、私がここで提案したい家具は使い込んでも壊れない上質な家具です。ここに載っている家具であれば、私が全て買い取ります、という意思表示のためのカタログです。家具の買い取り価格は、2年未満で購入価格の25%、4年未満で購入価格の45%、6年未満で購入価格の65%、6年以上になると購入価格の70%で買い取りますというシステムを設けています。
そうやって住む人にメリットになるような提案をしていきたい。またこういう頑丈な家具であれば、長年使っても壊れないし、買い取ってもリペアすれば味が出ていい風合いの家具になっていく。
大家さんって普通はただ建物をつくって、単に貸すだけという全然面白くないビジネスですよね。だけど、そこに違う業界の新しい概念を取り入れて、賃貸住宅の仕組み自体を面白くしていければいいなと思ったんです。
馬場:大家さんって、建物をつくって価値が下がっていくのを、メンテナンスでなんとか価値を元に戻すという意識しかなかった。でもこの試みはもしかすると建物の利用価値を高める方向にいくかもしれない。
このロジックのいいところは、まずお客さんがハッピー。賃貸だからって安い家具を買って住むのと、上質の家具を買って住むのとでは生活のクオリティーが全然違う。さらに、オーナーにしても建物の利用価値を維持できて、かつ家具のテイストが揃うということでハッピー。みんながハッピーになれるシステムです。
那部:Taito Styleでは家具屋と提携して、オリジナルの家具をつくってもらっています。素材の選び方や作り方を工夫して、上質でありながらもイニシャルコストもある程度抑えられるように努力しています。
馬場:そういう価値観が共有できる人が自然と集まってきそうですね。
■パーティーの開ける賃貸
那部:私が元々パーティー好きで、よく太東の自宅でもホームパーティーを開いています。Taito Styleにも今後、大勢人を呼んで定期的にホームパーティーできるような場所をつくりたいと思っています。Taito Styleの住民や、地元の人々を招いたパーティーを企画中です。
馬場:それはいいですね、ホームパーティーが開ける賃貸。住民同士や地元の住民との交流の輪が広がって、住むことがさらに楽しくなりそうです。
那部:インキュベーター的な役割は他にもあります。今後は太東エリアで、Taito Styleやエリア全体を盛り上げてくれるカフェを展開したいと考えています。そのコンセプトの元でやってくれる人と一緒にお店を始めたい。その店舗をどうやってつくっていこうかというところから一緒に考えて、それだったらその改装費の一部を出そうとか、家賃は売り上げに応じて設定しようとか、そういう協力をしていきたいです。
このカフェは、Taito Styleの住民だけでなく、周辺に住む地元の人々や太東に遊びにきた人々、色んな人々が便利で気軽に立ち寄れる場所にしたいと思っています。例えばケータリングがあったり、夜中まで開いているバーがあったり。インキュベーション的にこのTaito Style、その周辺環境を良くしていくようなもの、新しい地域のコミュニティーの核になればよいと思っています。
馬場:そういう人がいるだけで、この場の雰囲気というものが変わるし、エリア全体の価値が上がっていくと思います。
(2010年12月6日 太東の那部邸にて)
■工事は進んでいます
今回の震災に際し、Taito Styleのオーナー那部さんよりメールをいただきました。
「東北の方々はじめ被害に遭われた方たちには心よりお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復興を祈るばかりです。幸い外房にある私の家は大丈夫、またTaito Styleは海抜30mの高台にあるため津波の心配はありませんでした。とはいえ同じ九十九里浜の北端に位置する旭市の惨状をニュースでみてショックも受けました。東北の被災地がクローズアップされておりますが、もっと同県の被災地の情報も欲しい、そうすればすぐに支援に動ける事があるのではないかとも思っています。こうしたことが起きて、不安な気分というのはやはりありますが、一番大事なのは前に進むことだと、震災翌日から各自仕事を淡々と行っております」
2011年3月11日に発生した東日本大地震では、房総でも津波による床下浸水等、多くの人々が被害を受けました。しかし、徐々に落ち着きも取り戻しつつあります。幸いなことに、Taito Styleの現場は大きな被害もなく、4月の竣工にむけ進行しております。