column 2011.1.11
 
「Taito Style」プロジェクトレポート

「Taito Style」プロジェクトレポートvol. 1

大我さやか(Open A)
 

太東エリア(参考:房総エリアレポート vol.3 太東編)で賃貸住宅プロジェクトが目下進行中です!

現在施行中の賃貸住宅「Taito Style」。その物件の魅力をレポートします!

太東海岸が一望できる高台に建設中の賃貸住宅「Taito Style」。その事業主である那部智史さんは、15年も前から都心と房総の二拠点生活を実践する方の一人。これまでの自身の実験的なライフスタイルが、このTaito Styleのプランにもプログラムにも生かされています。

「Taito Style」とは?

全8戸からなる長屋タイプの賃貸集合住宅。
全戸の窓が海側に面し、太東漁港や九十九里の海岸線を一望できる魅力のロケーション。55平米と63平米の2タイプの住戸プランに、オススメの家具や房総ライフの必需品を集めた情報を入居者向けに提供する「Taito Style CATALOG」のサービスや、退去時の家具買い取りシステムなどを採り入れた、実験的でユニークな試みを盛り込んだ賃貸スタイルを計画中です。

「Taito Style」プロジェクトレポートでは、現在進行中である当プロジェクトの詳細を随時お伝えしていきます。まずはvol.1として、このプロジェクトの事業主である那部さんと、建物の設計を担当したOpen A・馬場正尊との対談で、この太東スタイルの成り立ちやプラン、ユニークなプログラムをご紹介していきます。

「Taito Style」のはじまり――クラウド化する住空間の提案

太東スタイルの発起人であり、二拠点居住を実践する那部智史さん。

二拠点居住のパイオニア

馬場:太東に住み始めたきっかけは何だったのですか?

那部:15年くらい前になるのですが、子供が生まれたのをきっかけに房総の大網白里町に小さな建売住宅を買いました。その頃から房総と都内の二拠点居住を始めたのですが、家の周りを見回すと都内近郊の住宅地と様子が全く変わらないのです。その後「どうせなら海が見える所まで行ってしまおう」ということになり、2004年に房総の家を太東に移すことにしました。私自身もサラリーマンを辞めてベンチャー企業を立ち上げるという、ワークスタイルの大きな変化があった頃でした。

馬場:今でこそ二拠点生活って普通に聞かれるようになってきましたけど、15年前といったらかなり珍しいですよね? なぜそんなことを考えたのですか?

那部:人が居住にかけられるコストは決まっていますよね? 
例えばそれが5000万円としたら、都内で考えるとすごく小さなマンションしか手が出せない。立地も23区の外れとか、千葉の郊外とか......。そのことにとても疑問を持ったんです。であれば、1500~2000万で都心のワンルームを買って、残りの3000万円で房総の広々とした土地に家をつくる。同じコストでも、ライフスタイルが全然違う。曜日ごとに住む場所を変えていくという方法もあるなと思ったんです。都内の住居はもう書斎だと割り切ってコストを抑え、週末は房総の「自分の家」に帰るという住み分けです。

馬場:20代でそのことに気づき、実践していたなんてすごいですね。でも、ベンチャーを立ち上げたばかりって、すごいプレッシャーがのしかかる時期じゃないですか。そんな忙しいときに、二拠点生活をすることによって何が良かったですか?

那部:太東に家を建てたときは東京での仕事も忙しくなっていて、必然的に平日は太東に帰れないという状況でした。でも、最初から「住み分け」という考え方で家を建てたので、それは苦にならなかった。むしろ移動することによってスイッチが切り替えられました。毎週末、ストレスを脱ぎ捨てていくような感覚です。もしも東京に365日24時間ずっといたら、プレッシャーに押しつぶされてしまうかもしれない。でも、ここだったら携帯電話の電波もつながりにくいので、電話に出たくなければ「電波が悪くて......」と言えばいいのですから(笑)。

馬場:それは使えるなあ(笑)。

「Taito Style」のある高台からはこんな水平線から登る朝日が見えるのです!

住みかを分散させる

馬場:太東に住み始めてからのライフスタイルってどんな感じですか?

那部:立ち上げた会社の仕事も落ち着いてくると、太東にいる時間も割と長くなっていきました。ちょうどサラリーマン時代とは違うタイプの仕事をいろいろやり始めた時期でもあった。30代になって余裕が出てきたのも大きかった。そして太東に住むことで、居住空間を選ぶのと同じように、働き方を選ぶようにもなっていったんです。

馬場:二拠点生活とともにライフスタイルとワークスタイルがちょうど変化していったんですね。

那部:どちらかというと仕事が生活に引っ張られて変わっていったという感じです。最初は月~金まで都内で、週末は房総でという生活をしていたんですが、そのうち住むところのこだわりが強くなっていった。この生活をするためにどういう仕事をすればいいか? という感じに。

馬場:二拠点生活とともにライフスタイルとワークスタイルがちょうど変化していったんですね。

那部:どちらかというと仕事が生活に引っ張られて変わっていったという感じです。最初は月~金まで都内で、週末は房総でという生活をしていたんですが、そのうち住むところのこだわりが強くなっていった。この生活をするためにどういう仕事をすればいいか? という感じに。

馬場:そういうライフスタイル、いいですね。

那部:むしろ、そういうスタイルに人々の生活も変化していくのではないかなと思っています。羽田空港が24時間化されて飛行機の便が良くなったり、高速道路が無料化されたり、新幹線もどんどん張り巡らされて、日本中どこでも数時間でいけるようになった。そうすると、家を一極集中させるんじゃなくて、分散させてもいいと思うんです。例えば極端な話、渋谷の小さなワンルームは書斎で、房総の家はリビング、箱根にお風呂場があって、沖縄にプールがある、みたいに。

馬場:家が解体されて日本中にちりばめられているんですね。

那部:交通機関が発達することによって、日本全国あちこちに家の機能が分散していく。その住まいも自分のライフスタイルに応じて変えられる。例えばちょっと仕事で書き物が多くなってきたから、都内の書斎を軽井沢に移してみようとか。住居のクラウド化というのでしょうか。クラウドコンピューティング・システムってありますよね。サーバーを所有しないで、個人のデータを全てクラウドにいれてしまえる。そのような住まい方が考えられないかなと思っています。家はもう個人では所有しないで、部屋の場所も大きさもインテリアも、個人や家族のライフスタイルによって変えていける。この「Taito Style」はそのプログラムの一部として考えています。
私の住んでいる家は、ここ1カ所だけで生活するにはとても不便な家のプランになっています。言ってみれば大きなワンルーム。1、2階とも間仕切りが全くありません。この家を建てる最初から、この家はリビングルームだという位置づけでつくっていたので、そういうプランになっているのです。

馬場:まるでリビングの中にお風呂や寝室、書斎があるという感じですね。
間仕切りで細かく区切られていないので、家全体がとても開放的で、視界や空気がつながっている。それに自然の風が家中を吹き抜けて、とにかく心地がいい。

那部:このライフスタイルと同じような環境を他の人にも提案したいと思い、今回の「Taito Style」プロジェクトを計画しているのです。

馬場:自分自身がその住まい方の実験台になって、その結果としてこのプロジェクトがあるんですね。

(2010年12月6日 太東の那部邸にて)

※次回、第2回は「Taito Style」の建物プランやコンセプトなど、建築の概要をレポートする予定です。

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