九十九里の海にCO2を埋めるってどういうこと??社会学者の品田知美さんに聞く

九十九里浜の風景に掘削機を重ねたイメージ(九十九里の海をまもる会作成)
きっかけは東金の喫茶店Rで見かけた1枚のチラシ。「九十九里の海をまもる会 ~二酸化炭素が海に捨てられる前に」よく分からないけれど、何だか気になる。
そこで会の発起人代表である社会学者の品田知美さんにお話しを伺いました。

品田さんの自宅マンション内にあるカフェにて
品田さんは勤務する大学の都合で外房に移住されました。はじめは利便性から駅の近くに暮らしていましたが、ふらり訪れた九十九里浜が気に入り、現在は大網白里市の海沿いにお住まいです。どのような理由で会を発足したのでしょうか?
品田さん:首都圏CCS事業を止めてもらうためです。CCSは気候変動対策の一つとして知っていましたが、率直に言ってあまり効果的ではない手段として理解していました。それがなんとうちの目の前の海で実施予定であると!つい最近知って。政策として良くないと思うし、九十九里の美しい景色を残したい。そういう思いで会を立ち上げました。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、CO2を回収し、地中深くに貯める技術のこと。
2050年カーボンニュートラルという、温室効果ガス排出実質ゼロに向けて、排出を避けられない工場や発電所などにとって「切り札的な解決策」と言われることもありますが、莫大な設備費用や実際の削減効果など問題点も多く指摘されています。

品田さん宅の近くの浜には亀が産卵に訪れるそう。「大丈夫?」海の生き物からも心配の声が聞こえるような
ちなみに。今年4月のニュースで「国内の温室効果ガス排出量は過去最少。初めて年間10億トンを下回った…」とありました。あと10億トンあるのか。仮に10億トンを森に吸収してもらうならどんな規模感だろう?AIに聞いてみると「約1.4億ヘクタール(日本国土の約3.7倍!)が必要で、現実的ではなく、排出そのものを減らしましょう」とクールな回答でした。
実際私たちは、技術革新を進め、省エネ活動をし、せっせと脱炭素に向けてがんばっています。それでも足りず、CO2を埋めて削減ということにしようというCCSの登場のようですが。うーん、なんだか胸がざわざわする。それ、大丈夫なの?
品田さん:大丈夫かどうか、国はきちんと調査しないまま進めようとしています。私たちは3つの疑問を投げかけています。①なぜ内房から遠く離れた九十九里に埋めるのか?②CO2は漏れ出る可能性はないのか?地震があったら? ③税金がかかりすぎる。グリーン設備投資に使い、排出そのものを減らすべきでは? というものです。

内房から約80kmのパイプラインで横断し九十九里の海へ(出典:JOGMECサイト/令和6年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」首都圏CCS事業の成果報告)
房総R不動産としては移住や九十九里での暮らしについても気になります。都心での生活が長かった品田さん、暮らしの良い点と困った点について聞きました。
品田さん:ここに暮らして10年以上経ちますが、生活は全く飽きないし、もう都心へは戻れないかも。夕方、ベランダに出て、ワインと地元でとれたイワシでつくるオイルサーディンをお供に海を眺める…これ以上なにも要らない!と本気で思います。困った点は特にないけれど、強いて言えば、東京で集まりがあっても駅から車で帰る時はお酒を楽しめないことかな。それでも、素晴らしい自然に囲まれながら都心まで1時間半で行けるのはとても貴重。世界的に見ても、ロンドン、NY、パリと並び4大都市となる東京からこんなにアクセスよく不動産価格も手ごろなのは奇跡かも。
品田さん、九十九里での暮らしが好きすぎてトークが止まりません。すぐ近所にある有機野菜の農家さんやクラフトビール醸造所もお気に入りで、そこで生まれるコニュニティも楽しんでいます。だからこそ、愛おしい地元の景色を守りたい。

お話しの後に海へ。この日は風が強く波も荒いけれど、品田さんは「こういう海も好き。一日の間にも景色が変わって全く飽きないの」
この九十九里沖での首都圏CCS事業は今年4月に経済産業省より試掘許可が出ています。待ったなしの問題。もし興味を持った方は詳細情報として下の参考リンクをご覧ください。会の意見にご賛同いただける方には、オンライン署名も受け付けているそうです。
埋めた後、数百年後、この海はどうなるんだろう。「浦島太郎が持ち帰る玉手箱の中身はCO2だったそうな。おしまい」未来の笑えない昔話を想像してゾッとするのは、私だけ?
九十九里の海をまもる会 https://www.kujukuriseasideccs.net/
オンライン署名 https://c.org/Wzfqp9cg2T
話を伺った人
品田知美 : 社会学者。早稲田大学理工学部卒業。シンクタンクにて環境政策に携わった後、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)。城西国際大学福祉総合学部准教授を経て、退職後は駒澤大学・城西国際大学等で講義を続けるかたわら執筆活動に従事。著書に『優しくない地球でひとが生きのびるための80の処方箋』(亜紀書房)ほか多数
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