2010.8.3

 

台北R不動産はあり得るか?

馬場正尊
 

台北に行って来た。

書籍『東京R不動産』の台湾語訳が出版されたのを機会に、シンポジウムを開いてくれたのだ。初めての台湾は旅行気分だったが、久々に亜熱帯独特の気候と、成長するアジアの都市の空気に触れることができて、少し元気になった。

アジアの都市の均質化はすさまじい。台北も東京のようだった。
バンコクも僕がバックパッカー時代に通っていた20年前に比べるとエキゾチックさは薄れている。モンスーンの都市の成長型は似たような風景にいきつくのだろうか。
R不動産シンポジウムで出る質問の種類も、東京のそれと似ていたし、台北の30代が「物件」に欲していることやデザインも、東京にかなり似ている。台北R不動産も、そんなに遠くない夢かもしれないと思わせる。
かろうじて台北を体感できたのが、メンバーたちと初日の夜にフラリと寄った屋台。

味の淡白な台湾ビールを、薄汚れ気味の小さなコップにつぎながら、漢字の質感を手掛かりに得体の知れない料理をテーブルいっぱい頼んだ。
コストパフォーマンスは最高。
雨上がりのねっとりとした空気を「これがないとアジアっぽくない」と楽しみながら、ワイワイと箸が進み、すっかり食べ過ぎた。
翌朝、目が覚めて短パンと草履でホテルの外に散歩に出たら、そのままなんとなく遠出がしたくなって、高架を走っているモノレールのような新交通機関に目的地もなく飛び乗ってみた。
遠くに、やたらと目立つ高層ビルが見えたので、近くの乗客に「あそこに行くにはどうしたらいいか?」と尋ね、乗り換え方法を教えてもらった。

101と呼ばれる超高層ビルは、クアラルンプールのビルに抜かれる前には世界一の高さを誇ったらしい。確かにデカい。周辺はまるで丸の内のように奇麗に整備され、何処の国にいるのかがまったくわからない。均質化アジアを象徴するかのような空間だった。
ここまで来たらと、展望エレベーターにのって最上階へ。空から台北を俯瞰することにした。
向こう側に大きな川、反対側には山岳エリア。台北は東京よりも自然が近い。

とくに興味深かったのが密集して並ぶ小さなビル群の屋上だ。ほとんどすべての屋上に建物が乗っかっている。いい言い方をすればペントハウス。リアルに表現すれば屋上バラック。亜熱帯にとっては屋上は第二の地表でもあるようで、植物がワイルドにモジャモジャと生い茂っている。
想像するに、この緑たっぷりの屋上はかなりいい空間なのではないか?
台湾の屋上にはお宝物件が、たくさん眠っている?
R不動産的な視点をかろうじて持ちながら、迫って来たフライトの時間に追われ、タクシーに飛び乗ってホテルに戻った。
さて、台北R不動産はあり得るのだろうか?

このブログについて
 

東京と房総のニ拠点居住から、三拠点、いや多拠点化し始めている。 山形はじめ地方都市での仕事が増え、毎日いろいろな交通機関に乗って、西へ東へと移動を続けることになった。 そして房総の我が家は、なぜかオフィス化が始まってしまった。 人生、イメージ通りにいかないものだ。まあ、知ってはいたが・・・。 とはいえ、これらは悪い話ではない、というより、どれも積極的で前向きな出来事。 最近、房総だけではネタが追いつかず、というか房総はもはや日常になっている。 というわけで、移動の先々での出来事をポツリポツリと書き留めていきます。
房総R不動産トップページへ


著者紹介
 

馬場正尊
OpenAという設計事務所をもつ建築家であるかたわら、東京R不動産のディレクターや東北芸術工科大学の准教授を務めるなど、仕事も多方面に渡っている。

カテゴリホーム
コラムカテゴリー
 
特徴 フリーワード
フリーワード検索
関連サービス
 
メールサービス
 
SNS
 
東京R不動産の本
 
公共R不動産のプロジェクトスタディ

公共R不動産の
プロジェクトスタディ

公民連携のしくみとデザイン




公共R不動産のプロジェクトスタディ

CREATIVE LOCAL
エリアリノベーション海外編

衰退の先のクリエイティブな風景




団地のはなし 〜彼女と団地の8つの物語〜

団地のはなし
〜彼女と団地の8つの物語〜

今を時めく女性たちが描く




エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ

エリアリノベーション:
変化の構造とローカライズ

新たなエリア形成手法を探る




PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

PUBLIC DESIGN
新しい公共空間のつくりかた

資本主義の新しい姿を見つける




[団地を楽しむ教科書] 暮らしと。

[団地を楽しむ教科書]
暮らしと。

求めていた風景がここにあった




全国のR不動産

全国のR不動産:面白く
ローカルに住むためのガイド

住み方も働き方ももっと自由に




RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC
公共空間のリノベーション

退屈な空間をわくわくする場所に






toolbox 家を編集するために

家づくりのアイデアカタログ






団地に住もう! 東京R不動産

団地の今と未来を楽しむヒント






だから、僕らはこの働き方を選
んだ 東京R不動産のフリーエー
ジェント・スタイル






都市をリノベーション

再生の鍵となる3つの手法






東京R不動産(文庫版)

物件と人が生み出すストーリー






東京R不動産2
(realtokyoestate)

7年分のエピソードを凝縮






「新しい郊外」の家
(RELAX REAL ESTATE LIBRARY)

房総の海辺で二拠点居住実験






東京R不動産

物件と人が生み出すストーリー






POST‐OFFICE―
ワークスペース改造計画

働き方の既成概念を変える本