第76話|売主さんとご対面!
「主のいる状態のあの家に行くというのは、何だか妙に緊張するなあ」
「そうだね・・・定年後のおじいさんって伺ったけど・・・どんな方だろう?気難しかったらどーしよー。」
「きっと売主さんも、俺らのこと想像してるんだろうな。ヘナヘナした都会の腰抜けだったら困るなーとか」
「それとさ、手土産どうする?こんどわたし表参道に行くから、ちょっとオシャレなお菓子でも買っとく?」
「えーお前世間知らずだなあ!こういうときは、記号的で分かりやすいものがいいって決まってるんだよ。
ヨックモックとか、亀屋万年堂とか、ユーハイムとか、お菓子のホームラン王のナボナとかさー」
・・・そこでわたしは夫の忠告どおり、洋菓子のウェストでリーフパイ詰め合わせを買うことに。
(「真面目な味を心がけています」ってCMで言ってるくらいだから、心証よさそうでしょ?)
まったくこれは、わたしたち家族の運命がかかった「面接」なのです。おのずと気合が入りますよね。
いよいよ、ご対面当日。
この日は、不動産屋さんに代わり、売主さんと面識があり地元で顔が広いYさんと、
行政書士のTさんがご同行。
まずは「道の駅」で落ち合って、それからぞろぞろぞろと車を連ねて三芳村の家に向かいます。
景色を愛でる余裕もなくいそいそと道をゆき、すでに見慣れた家の玄関前に車を停めて降り、
居ずまいを正してから中に声をかけました。(インターホンはありません。)
「どうも、ごめんくださーい」
ほどなく、がらがらがらと玄関の扉が開き、中から初老の男性が出てきました。
「ああ、遠路どうもどうも、お待ちしていました。何もないですがまあ、中へどうぞ。」
見れば、父親と同世代くらい。ちゃんとフツウにニコニコした方でほっとしました。
(まあ別に、敵対関係にあるわけじゃないから、こっちが過剰にこわばりすぎなのです)
わたしたちは精一杯礼儀正しく、ぴんとちゃんとにこやかに「はじめまして」とご挨拶。
不動産屋さんと何度かお留守宅にお邪魔したときは「いつか我が家に・・・」と想像が膨らんだのに、
こうやって今この家に住んでいる方に出迎えられてしまうと、まるっきり他人の家にしか見えません。
玄関を上がってすぐの客間ド正面に飾られたお仏壇も神棚も急にリアルなものに感じられて、
すみませんヨソモノでございます〜と身が縮まってしまいます。
子供たちは恐ろしく普段どおりで「やっぱりここひろ〜い!でも暗〜い!ルンタッター」とスキップするので
「にいに、頼むから、今だけは絶対静かにしていてちょうだい」と低い声でたしなめながら冷や汗が出ます。
出された座布団に正座して、さて何から話そうかとみんなが構える中、売主さんが口をひらきました。
「どうですか、この土地、気に入りましたか。何しろ広いんで、維持管理が大変なんですよ」
・・・つまり、ちゃんと土地の世話が出来ないヒトには売りたくない、ってことだな。
「はい、何しろ素晴らしいと思ったのは、この家からの外の風景です。
他にもずいぶんいろいろな土地を見てまわったんですが、里山の美しさをこんな風に堪能できるのは、結局この家だけでした。それで、田舎暮らしの右も左も分からない分際ではありますが、ぜひここで家族でがんばってみたいと思った次第でして」
・・・・こういうとき、夫はなかなか頼もしい存在となります。
いつもは斜に構えていてノラクラ批判的なのに、そんな片鱗などまったく見せないひたすらひたむきな態度。
トツトツと真面目に、こちらの思いの丈を語ります。
(思わずこっちもウルウルした目で彼の言葉にうなずくようなキャラになってしまったりして。)
このブログについて平日は多忙なサラリーマン、だが休みとなると植物栽培マニアと化す夫。膨大な数の珍植物が自宅からあふれ置き場所に困り果てた挙げ句、夫婦の選ぶ道は「田舎で地主になる!」。植物と人間にとって理想の土地を探し求めることに決して妥協しない彼らの「とんでもない紆余曲折」を、赤裸々に綴ったブログ。
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著者紹介Miori
子供や夫や動物を育てるのが趣味。カフェの窓際でのんびり読書する時間と、家でのんびり造顔マッサージする時間が持てれば幸せ。と、ささやかに都心のインドア生活を楽しんできた主婦が、突如「田舎の土地をゲット」するために髪を振り乱して奔走しはじめる。結婚相手によって、人生が激変することを実感中・・・

