第58話|お岩さんになっても
わたしは驚いて、一瞬夫が対戦相手だったことを忘れ、自分の顔をぬっと突き出して言いました。
「ちょっと、ねえねえ、目の下どうなってる?今なんか手に血みたいなのがついたよ。」
ヤル気マンマンだった夫も、わたしの素の声にきょとんとした後たちどころに真顔に戻り、
「え?まじ?」と左目のところをのぞきこみました。
「あらら・・・なんちゅうか・・・ちょっと腫れちゃったなあ」
ずいぶんしげしげとその部分を眺めている夫。
「しかも・・・ちょっと切れてるよなあ。これはまずいなあ、女のヒトの顔に傷をつけたらまずいよなあ。」
そんなことを口走りながら、なんだか急にオロオロしだしました。
わたしは、タオルでその部分を押さえ、ごそごそ鏡を取り出して見てみると、
ありゃあ最悪。
目の下に青あざができています。一部、擦過傷のような跡も。
「ひどい顔だ・・・」呆然と鏡を見るわたしに、夫は「大丈夫か?悪かったな、こんなことになっちゃって・・・・」
と完全に平謝り。「ごめんな、にいにとぽちんも、びっくりしただろう。ごめんな。ごめんな。ごめんな〜。」
後ろできょとんとしているこどもたちにいっぱい謝っている夫の姿に、わたしの怒りは一気にしぼんでいきました。
すごい速度で冷静になっていく自分を実感しつつ、
「いいよ、もう。大丈夫だから、行こう。」
と、タオルで目の下を押さえながら、夫に運転を促しました。
・・・よーく考えれば、わたしが悪いとも言えなくもない。夫の口も悪いけど、わたしも相当悪い。
お互いの不機嫌がぶつかって、あろうことかこんなことになってしまったが、そもそも救いようもなくつまらないことだしな〜。
と冷静になって考えるうちに、夫婦そろってアホだなあと急におかしくて笑いたくさえなってきました。
「おまえの顔、そんな状態だし、今日はやめて帰ろうか?」
「行こう。本当に約束の時間に間に合わなくなるし。あの土地、見ておいたほうがいいんじゃない?」
こんな痴話ゲンカで行くのをやめたら「あの土地は、なんだか不吉だ」ってことになり、結局行かずじまいになる気がしたのです。
こんなことでアタリの土地に遭遇する可能性を潰すなんて、アホの上塗りでしょう。
「まあ、そうだな。じゃあ、行こうか・・・」へこたれたかんじの夫は、またまた、車を走らせました。
このブログについて平日は多忙なサラリーマン、だが休みとなると植物栽培マニアと化す夫。膨大な数の珍植物が自宅からあふれ置き場所に困り果てた挙げ句、夫婦の選ぶ道は「田舎で地主になる!」。植物と人間にとって理想の土地を探し求めることに決して妥協しない彼らの「とんでもない紆余曲折」を、赤裸々に綴ったブログ。
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著者紹介Miori
子供や夫や動物を育てるのが趣味。カフェの窓際でのんびり読書する時間と、家でのんびり造顔マッサージする時間が持てれば幸せ。と、ささやかに都心のインドア生活を楽しんできた主婦が、突如「田舎の土地をゲット」するために髪を振り乱して奔走しはじめる。結婚相手によって、人生が激変することを実感中・・・

