第57話|怒りのバナナ
理由はくだらないんです。
にいにのチャイルドシートが緩んでしまっていたため、夫に「ちゃんと締めてあげて」と言われたのがきっかけです。
助手席に座っていたわたしは、朝食がわりに食べかけていたバナナをダッシュボードの上に置いて
振り向き姿勢で直そうとし、ごそごそやっていると
「そんなんじゃだめだよ。路肩にとめるから、後ろに回ってちゃんとやってあげて。」
と、夫は車を路肩にとめました。
でもわたしは、モノが山積みになった後部座席のど真ん中に埋もれて座っているにいにのシートベルトを直すには、やっぱり助手席からぐいっと振り向いて直した方が効率がよいと判断。
そのままの姿勢で作業を続けました。すると、夫は業を煮やし、
「だから!横着しないで車の外に出たが早いんだよ!!」と自ら後部座席にまわって、
じゃじゃじゃっと手際よく直してしまいました。
「こどもの命がかかっていることなのに、横着するなよ。」と、夫。
そのコトバにカチンときたわたしは、「前から直して何が悪いの?その方がうまくいくって、判断しただけでしょ?」
と反論。子供を大事にしていない親扱いされた怒りで、バナナを持つ手が震えます。
「うまくいかなかっただろ。後ろに回ってやればって言ったのに無視してさあ。
意地張っても結果が伴わなきゃ意味がないんだよ。」
夫は強い口調でそう言うと、ぶ〜んと車を走らせました。
その寛容さの欠片もない言い方に、(まあたしかにそうだな)という反省などぶっとんで、
「やり方がヒトそれぞれでどこが悪いの!!だいたい、横着だ意地っ張りだって決めつけて何様のつもり!?」
と逆切れ。普段は出すことのない、拡声器がハウリングしたようなきいきい声で言いました。
「そんな攻撃的な状態で助手席にいられると、不愉快だ。一緒に土地を見に行く気も失せるよ。キャンセルして戻るか。」夫が投げやりに、ぼそり。
それを聞いて、もう、もう、もう、完全にブチブチにぶちきれたわたし。
誰のために毎週毎週毎週毎週土地探ししてると思ってるのよ!!!!!!
「あなたなんかともう二度と一緒に来るもんですか!!!」
と叫んで、持っていたバナナで夫の顔面をばちぃっ!と叩きました。
完熟バナナはその瞬間にぐにょりと折れ、夫の顔の左半分と運転用メガネに、甘い果肉が、べっとり。
驚いた夫は車をまた路肩にとめ、顔とメガネを拭きながら、「おちつけ〜、おちつけ〜」とつぶやいています。
(わたしに言ったのではなく、自分に言い聞かせていた様子。彼もかなり血がのぼっていたのだと思われる)
わたしはもう、感情に歯止めがききませんでした。
「金輪際、土地なんて知らん!わたしとこどもたちは、ここで降ります!」
と啖呵を切って降りようとすると、こんどは夫が逆上する番。
「ふざけんな!何でおまえがこども連れて帰るんだよ!?こどもはオレのだ。絶対に渡さないからな!!」
と言っていきなりわたしの顔を、ドラえもんのようなグーで横からはたいたのです!
もう、お互いが何に発奮しているのかさえ、よくわからん状態に。
わたしも「こんにゃろ!」と夫をめちゃくちゃに叩き、夫も「おまえなんか!」と応戦。
そのさなか、夫にはたかれた目の下がチリチリするなと思ってぐいっとぬぐったら、手に血が!!
このブログについて平日は多忙なサラリーマン、だが休みとなると植物栽培マニアと化す夫。膨大な数の珍植物が自宅からあふれ置き場所に困り果てた挙げ句、夫婦の選ぶ道は「田舎で地主になる!」。植物と人間にとって理想の土地を探し求めることに決して妥協しない彼らの「とんでもない紆余曲折」を、赤裸々に綴ったブログ。
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著者紹介Miori
子供や夫や動物を育てるのが趣味。カフェの窓際でのんびり読書する時間と、家でのんびり造顔マッサージする時間が持てれば幸せ。と、ささやかに都心のインドア生活を楽しんできた主婦が、突如「田舎の土地をゲット」するために髪を振り乱して奔走しはじめる。結婚相手によって、人生が激変することを実感中・・・

