第51話|「プライベートビーチだぞ♪」だと?
海の存在を確かめに行っていた夫とにいにが、ほどなく戻ってきました。
「ママー、海に行ってきたー。」
へ?上から眺めただけじゃないの?にいにのズボンは何だかどろだらけです。
聞けば、ふたりで崖をずるずると降りて海岸に出て「イエーイ!」と記念写真を撮り、
またよじのぼって戻ってきたとのこと。息を切らし、興奮冷めやらぬ顔の男ども。

「ここに土地買ったら、うちからシュノーケルつけて海に行けるよ!海の家だよママ。」
海の家!!!
「そうなんだよ、下は立派なビーチだ。
しかも、プライベートビーチだぞ。何しろ、うちからしか、アクセスできない海岸なんだもんな。」
うち!?ここが、‘うち’になっちゃうわけ?
だいたいわたしたちの土地検索条件に、「海近い」なんてありませんでしたよ。
・・・わたしはすっかり、この盛り上がりに取り残されてしまいました。そんなことおかまいなく、
「なんか、いろんなものが漂着してて、ビーチコーミングしたらけっこう面白いぞ。
にいには貝をたくさん拾ってた。ほらポケットがあんなにふくらんでるだろ〜」
「ママ見てこれ〜」
「ちょっと!海はけっこうですけどね、」ウハウハした男どもの話はエンドレスに続きそうだったので、
ともかく遮りました。
「こんなにモサモサ草が生えてて真ん中が抜けてるよくわかんない土地で、
ホントにいいわけ?だいたい、ビニルハウスはここに建てられるの!?」
言っているうちに、軽く腹もたってきます。
毎日、植物が死ぬーー日影に押し込めて育てるなんて酷すぎるーーおまえどっかに土地もってないのかーー
とわめいてうめいて大騒ぎの夫。それが、「プライベートビーチだぞ♪」だと?

おいー、なめとんのか?
・・・わたしが静かに毛細血管をぶちぶち切りつつ怒りを増幅させていると、
「いやっはっはっはっはー!
海に降りちゃうとは、お父さんもボクも、元気がいいなあ!
あなたがたみたいな行動派には、この土地は合っているかもしれないね。さあ、もうちょっと先に行きましょうか。
草ぼうぼうだけど、ちゃんとお見せしますよ。広い平坦な土地がそこここにあるんですから。
これだけ広大だと、100坪の土地だって埋もれちゃうんだから、いやまったく宝探しだなあ!」
Eさんは、それはそれは楽しそうな嬉しそうな声を出して、「では。」とさくさく歩き始めました。

