第50話|海に近いっていっても!!
待ってよー。ひとりで走っちゃあぶないからー。
わたしのコトバなどにちらりとも反応せず、にいには斜面をかけのぼっていきます。
「ちょっと一緒に海見てくるわー」と、にいにと同レベルの好奇心を持つ夫も、一緒に駆け出します。
やれやれ。わたしとぽちんは、取り残されてしまいました。
ちょっとした空隙の時間にEさんはさっそくまたタバコを取り出して、すぱー。
今どき珍しいチェーンスモーカー。おいしそうに一服しながら、海があるはずの方を目を細めて眺めています。
この風情、ぜったい不動産屋さんじゃないな。
Eさんの横顔を見ながら、
たいへん不躾ですけどひょっとして、何か他のお仕事もなさってます?・・・と、
思い切って聞いてみようと思いましたが、そんなことを知りたがるのは何となく野暮なかんじがして
結局問いかけるコトバを飲み込んでしまいました。
たとえば気合いを入れて一張羅の服を買うことがあったとしても、
そのお店で出会った店員さんのプライベートの部分を知りたいとはあまり思いませんが、
不動産屋さんの場合は何となく、一歩前に出てコミットしたくなる。なぜだろう?
わたしね、「土地を見る」という行為は、ある意味とても神秘的だと思うんです。
目かくしされて手を引かれ、ふいに止まって「ここですよ。」と言われ、目を開ける。
「ここはどこ?わたしたちの新天地?」と、その手にすがったまま無防備に目を泳がせる。
物件見学のドキドキは、そんなかんじと似ています。
言ってみれば、土地を紹介されたあともまだ「目をつぶった」状態です。
手探りで自分たちの未来の拠点のイメージを作り上げる過程を、手を引いてじっと付き合ってくれるのが
不動産屋さんなのかもしれません。
だからこそ、その運命水先案内人の観察には、けっこう鼻を使うんです。(あ、犬だったらってことです。)
「くんくん、よい人かな」「くんくん、怪しいにおいはしないかな」「くんくん、何で、この仕事してるのかな」
・・・ちょっと意識しすぎですかね。
もっとドライにプラグマティックにいかないと、疲れちゃいますかね。
でもね、袖刷りあうも他生の縁。こうして巡り合った方が「不動産屋さんらしくない」ヒトだったりすると、
いろいろ想像したくなっちゃうんですよね。(これって・・・ワイドショー根性?)
まあでも、Eさんがホントにリッチマンか否かを確かめるのは、差し出たことだと思ってやめたんです。
わたしとしては、「実はこれ、全部私の土地なんですよ。」なーんてコトバがEさんの口から飛び出しや
しないかと、期待していたんですが。
おっと本題からそれました。
