第35話|エントランスは有料道路にあり?!
Tさんの車にハザードランプがつき、減速して、はじっこに寄りました。
わたしたちも「ここ?」と戸惑いつつも、トラブルがあった車のように路肩にとめて、おずおずと外に出ました。
他に車がいないとはいっても、一応有料道路のどまんなかです。
そこで目にしたものは
『売り地』
という看板。Tさんのおっしゃる通りの場所に、その土地は存在していました。
木はないけれど、鬱蒼とした茂みが続く斜面です。あまりに茂みが深くて、様子がよくわかりません。
「ここ、降りて行くんですけど」ととてもフツウなかんじで案内してくれるTさん。ちなみに彼は背広姿。
どう見ても下に降りる道は存在しないし、余計なお世話だけどこんなとこ降りたら絶対、
Tさんのズボンは次の日クリーニング出さなきゃならないよ。いいのかな。
ぽちんをかかえ、にいにと手をつなぎ、ぼーっと突っ立っているわたしを尻目に夫は下りる気マンマン。
方位磁石を手に、「これは南斜面ですねえ。下の方に平地はあるんですか」なんて言っています。
「下は平地ですよ。2段になっていて、下の方に行くとけっこう静かで気持ちがいいです」
男衆がぞろぞろと茂みの中を通って下りていくのを見ながら、まあいいや。待ってよーっと。と
案ずるのをやめて子供たちと草をむしって座っていました。
天気が良くて、本当に気持ちがいい日です。
にいにとぽちんは、有料道路の道ばたでだんご虫をひろいはじめました。
帽子の中に集めて、ころころ転がして、だんご虫が玉になるのを見てとってもうれしそうです。
何にも悩みがなくて、大人の行く先行く先で無邪気に遊ぶ子供たちの姿をみていると
どこの土地に落ち着いたとしても、こうやって仲いい家族だったらそれでいいじゃない。なんて
諦観にも似た気持ちが沸き上がってきました。(わたしの心模様もコロコロ変わるもんだな。)
ついでに、もうひとりくらい子供生もうかな・・・その方が楽しいかな・・・なんてうらうらと考え始めたとき、
「おーい、こんどは俺が子供たちを見てるから、おまえも一度下に下りてみたら?」と夫の声。
「あまりに草ぼうぼうで、よく様子が分からないけど、とりあえず平地らしきものはあった。日当たりもいいよ。」
声のトーンでは彼がこの土地を気に入ったのかはわかりませんでしたが、じゃあわたしも一度は見てみよう
と、ぽちんを彼に預けました。
