第34話|わたしたち、どうなっちゃうんだろう
律儀なTさんは、スカイラインの通行量400円をちゃりん、と渡してくれました。
よくわからない閑散とした有料道路、房総スカイライン。
地図で見ると内陸から鴨川の方へ抜ける近道になっているのですが、Tさんとわたしたち以外に
前後に車がいないのです。開通前の道路を試走しているのかと思うほど。
「果てしなく空いているねえ」
Tさんの車の後ろ姿を見ながら、何だか一瞬、不思議な浮遊感を覚えました。
さっき逢ったばかりのヒトにくっついて、誰もいない道を走り、ぜんぜん知らない土地に連れていってもらう道中・・・
こうやってふらふら移動をかさねているうちに、本当に、いつかは運命の土地に巡り合えるんだろうか?
それとも、そんな夢みたいな話はやっぱりなかったんだって、あきらめるために、見て回っているんだろうか?
車の外の世界のすべてに現実感が感じられず、たしかな未来が何にもない感じがして
ぼんやりとだまりこくって窓の外をながめていました。
・・・・わたしたち、どうなっちゃうんだろう。
「なあ、さっき見た土地はとりあえず保険くらいには考えられそうだよな。地型がいいからビニールハウスも
効率よくたてられるし。ばっちり接道してるしね。ははは。でも高台じゃないんだよねー」
わたしの心に霧のようにたちこめる不安など、まったく我関せずの夫。
「たとえばあそこの土地なら何棟たつかなー」なんて言いながら、ハイテンションで運転しています。
そう、彼にとって土地探しは、明日会社に着ていくスーツがない、買わなきゃ!くらい逼迫感のある話であって
しんみりするような心の余白なんてないのです。
ま、この推進力があってこそ、土地探しがつづけられているんですけどね。はい。
