第32話|「できすぎ」な土地とはつまり...
ゆっくりのぼって10分くらい。とうとう、とうもろこし畑に到着しました。
とおっっても広くて、明るくて、静かな畑。果てしなく広がる青い空。まわりは森で縁取られています。
夏ではないのに、耳の奥で蝉の鳴く声がしてくるような、そんなところです。
すてき・・・。今思い返しても、とても心地の良い高台の畑でした。
こんなところがあれば、にいにもぽちんも、きっと自由に遊び回れるに違いないな。
環境がとってもいい。下の土地もいいけど、こんなロケーションに接続されてるのがまた、魅力だなあ。
ひょっとしたら、さっきの土地、本当に買うことになるかな・・・・・。
そんな思いを胸に、意味なく畑を走り回るにいにを眺めていました。
夫はすでに車で到着していて、ひとりでうろうろ歩き回って、何かを考えている様子。
こそこそ近づいていって、「ね、いいとこだね」と耳打ちすると、
「そうだな。でも、もう一度下に降りて、さっきの土地を見てみない?」
とのこと。その意図がはっきりと分からず、うん、と相づちを打ってから、しばし考えました。
なんか、問題あったっけ?
何故、彼が何となくあいまいな顔で思案しているのか、よくつかめません。
彼はSさんのところにほがらかな顔で近づいていって「ここ、いいですねえ。ここは売らないですよね。」
なんて尋ねています。
「そうですね。ここは、畑としてすでに昔からやっていらっしゃる方がいるので・・・」
見りゃわかる。何でそんな質問をするんだろう。
「ですねえ。やっぱり、これくらい開けていて環境がいい場所は、みなさん売らないですよねえ。」
「そうですね。手放す方は少ないかと思います。」
そんな会話を耳にしながら、すっかり眠りこけてしまったぽちんを車のチャイルドシートに戻して
にいにと共に、車に乗り込みました。
で、時計をみてびっくり!!
なんと、この土地を見るのに1時間半近く費やしてしまっていたことが判明。
実は、この日はもうひとつ、違う物件を違う不動産屋さんに紹介してもらう約束になっていたのです。
すっかり長居してしまって時間が足りなくなってしまったので、もうちょっとここに居たかったけれど
慌てて失礼することに。尻切れトンボで申し訳ないと思いつつも、「また連絡しますー!お腹の赤ちゃん大切にー!」と
Sさんに手を振って、次の目的地に向けて車を発車させました。
のぼってきた坂道を下って、最後にもう一度、車から降りてこの土地の有り様を見ました。
地型がいいからよけいにそう見えるのでしょうが、なんだかとってもまとまりよくお手頃に見え、
不都合なことがあまりなくすんなり田舎暮らしを始めるのにぴったり、という「できすぎた」土地に
見えました。
「できすぎた」っていうのはつまり、未知数なところが少ない、ということです。
それって、不安がないっていう誉め言葉のはずだけど・・・・・・あれ?
さっきまで、文句なしって思ってたのに、なんだろうこの、もやもやな感じ。
とっても条件のいい土地なのに、無理矢理、難癖つけようとしてるのかな、わたしったら。
彼があの時、妙に含みのある物言いでわたしのテンションを盛り下げたからかな・・・・。
帰りしなに感じてしまったこの「違和感」に自らちょっと苛立ちながら、なんとなくもやもやを抱えたまま
この土地をあとにしたのでした。
