
「房総PEOPLE」では房総を拠点に活動している方たちを紹介していきます。第1回は、いすみ市で「チーズ工房IKAGAWA」を営む、五十川夫妻をご紹介。
房総は海! サーフィン! ・・・だけじゃない。実は、手作りチーズの工房がひそかに集まるエリアなのです。

元会社の上司から2頭のジャージー牛をもらったことが、房総にチーズ工房をつくるきっかけだったという。
いすみには、今回ご紹介する「チーズ工房 IKAGAWA」や有名レストランでも使われている「フロマージュKOMAGATA」など、自家製チーズの名店がひそかに集まっている。穏やかな気候と自然に恵まれた房総は、まさに酪農にはもってこいの場所。ジャージー牛の良質な乳で作られた手作りチーズを、是非一度味わってもらいたい。

県道から細い道を行くと、坂の脇に「チーズ工房IKAGAWA」の看板。

手前が工房兼自宅。古い農家と庭を手入れしながら住んでいる。

工房で一日中チーズ作りに励む旦那さん。
いすみの自然に囲まれた工房
「チーズ工房IKAGAWA」はいすみ市山田に工房と牧場を構えるチーズ工房。3年前にオープンし、「ムチュリ」というスイスの伝統的なセミハードチーズをはじめ、クリームチーズやモッツァレラ、サワークリーム、カチョカバロなど数種類のチーズや乳製品を販売している。インターネットや道の駅でも売っているが、工房に直接チーズを買いにくるお客さんも多い。夫婦二人で手作りしているため、なかなか量産できるものではないが、五十川夫妻はそれでも工房に直接買いに来てくれるお客さんのために、ひとつでも多くチーズをつくろうと努力している。
五十川夫妻がこの地でチーズ工房を始めたきっかけは、元会社の上司からもらった2頭のジャージー牛。元々田舎で暮らそうと思っていた夫妻は、かつてスイスで過ごした頃の経験を活かし、この2頭の牛でチーズをつくって生計を立てようと考えたそうだ。だが、なかなか牛を育てられるような土地と家は見つからず、長野や三重にまで足を伸ばした。たまたま茂原の不動産屋に「あんたたち、牛持ってるならちょうどいい農家があるよ」と声をかけてもらい、この土地と家をなんとか手に入れた。
五十川夫妻の長年の手入れにより、はじめは鬱蒼と篠竹に囲まれた家だったが、今ではびわ、ぶどう、ジューンベリー、ポンカンなどが鮮やかに育ち、周囲の田園風景を見渡す日当りの良い家となった。最初は物件についていた農地を牧場にしようと思っていたのだが、「まわりに民家がない土地では、牛を捕られてしまっては大変だ」と、大家さんが、まわりに民家のある自分の土地を快く貸してくれた。近隣も農家なので、自分の家で採れた野菜を分けてくれ、夫妻は代わりにチーズや絞りたての牛乳を譲っている。スーパーに行かずとも、物々交換でほぼ生活できてしまうのだ。