「新しい郊外」の家 出版記念企画対談「建築家馬場正尊×編集者菅付雅信」
text= 杉浦貴美子

1月14日に発売された『「新しい郊外」の家』の出版を記念して、著者である東京R不動産のディレクター馬場正尊と、この本の編集を手がけた菅付雅信さんが対談をしました。どのようにして本が生まれたのか、房総に家を持つということ、そして「新しい郊外」の可能性について、本さながらに「素直」に語って頂いています。

本が生まれたきっかけは?

菅付:
僕自身、去年結婚をして、引越しを考えたり、郊外へ行く機会が増えたんですけど、行ってみると湘南や埼玉のような近場の郊外でもすごく面白くて。都心にばかり住んでいる必要なんてないな、東京脱出したいな、と思い始めていたところだったんです。そんな時にちょうど馬場さんのブログ「房総の海辺に、土地を買ってしまった」を読んで、すごいビビッときたんですよ。
そこで去年の5月にブログにコメントをして、会って話をしていくなかで「本にしましょうよ」と僕が言って。家が完成するのが10月ということで、それなら競うように出しましょう! と。


ちょっとした気づきから土地を買って家をつくるまで、それに至った家族の経緯が書かれています。

房総は東京から1時間半。実は十分通勤圏。

『「新しい郊外」の家』を編集した菅付雅信さん。
元『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』編集長。
出版からウェブ、広告、展覧会まで、さまざまな分野を"編集"する。
Sugatsuke Office http://www.sugatsuke.com

馬場:
最初冗談かと思いましたよ。僕にとって菅付さんは「都会で活動する人」のイメージなんです。『コンポジット』や『インビテーション』の編集長をなさっていたし、極めて都会的なメディアを作っている印象が強くて。ご自身が出された『東京の編集』もそうだし。だから最初はびっくりしました。菅付さんのような人が郊外? って。でも同時に、菅付さんが同志なら頼もしい、僕は間違ってないんだ、と思ったんです。 その頃手がけてられていた仕事が、僕がイメージしていたのと全然違うタイプの仕事だったことも驚きました。当時どんな本を作っていたんですか?

菅付:
ケン・ハラクマさんの『ヨガから始まる』や、伊藤志歩さんの『畑のある生活』とかですね。最近、自分の中ではオーガニックな「食」というのが大きなテーマで。
僕は4年前に体調を壊したことをきっかけにマクロビオティックやヨガを始めているんです、そういった経緯でつきあう世界や仕事が徐々に変わってきて。

馬場:
それは僕が房総へ、と思ったのとシンクロするところがありますね。僕も体調を壊したことが理由の一つにあったんです。それまでは都会のなかでどわーっと仕事をしていくことに快感もあったし、そういう人生だろうなと思っていたんだけど、40歳が近づき始めたある日、あれ? と思い始めて。

房総に抱いているイメージとは?

馬場:
今まで僕のイメージの「房総」は、ワイルドで海中心の極めてアクティブなものでしかなかったのに対して、菅付さんは7000冊ほどもある蔵書の行き場に「房総」という選択肢を入れていたのが印象的で。
え! 湘南じゃなくて房総? そこで僕はふと気がついた訳ですよね。アクティブなイメージの房総のベクトルだけではなくて、例えばニューヨークとロングアイランドの関係性のような、「コミュニケーションするにぎやかな都会と創作活動をする穏やかな郊外」というもう一つのベクトルもあると気がつかされました。ロングアイランドはNYで活動する作家やアーティストがたくさん住んでいました。時間距離も一時間ちょっと。東京と房総との位置関係と同じくらいです。
実際に房総の賃貸棟の内覧会をやってみると、サーファーに混じって、映像制作をされている人とか、写真家の人とか、東京から見学に来ている色白な人達が案外たくさんいたんです。安いねーって言いながら帰って行かれたりして。「新しい文化」のポテンシャルを持つ人達がこのエリアに気づき始めている、ということを実感しましたね。