蟹を待つ人

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11月になり、房総にも少しずつ、冬の足音が聞こえ始めた。
ただ今日は抜けるような青空で、昼間はTシャツでも過ごせる気温。

房総R不動産を千葉テレビが取材するということで、
僕は横から眺めているだけだが、ちょとだけ撮影につきあってみた。

一宮の海岸線。
撮影よりも気になるおじさんがいた。

kani_01.jpg

ただ、海を見てたたずんでいる。
しかし落ち込んでいるでもなく、思索にふけっているわけでもなく、
目には、何らかの目的が宿っている。
向こう側では、ワイワイ撮影が進んでいることなど、まったく関係ない様子。

「何をしているんですか?」
と尋ねて見たら。
「蟹を獲っている」
という答え。

そばに置いてあったバケツを見せてくれた。

kani_02.jpg

確かに。
10センチちょっとの蟹がうじゃうじゃと入っている。
「今日は海が荒れているからダメだ。いいときは100匹くらい獲れる」
100匹!
みそ汁にしたらうまいらしい。

「どうやって獲っているんですか?」
と尋ねてみた。というのは、先ほどの写真のように、
おじさんはたたずんでいるだけで、何もしていないように見えたからだ。

「網を投げている」
よく見ると、おじさんから海に向かって、細い糸が伸びている。
地引き網らしい。といっても、遠浅の海で、おじさん一人、たいした距離に網は投げられない。
「そのへんでとれる」と、目の前を指差した。手で投げれる距離など5〜6mでしかない。

え?
すぐ目の前の砂浜に蟹がこんなにいるわけ?
見せてもらった網はまったく大きくない。
「そこらへんでも売ってるよ」とおじさん。

まじっすか!
今度、やってみよう。

サーフィンで海に入るとき、何やらえも言われぬ固いような柔らかいような、不思議な質感の物体を踏む記憶があるが、それは蟹だったのか!?

海から引き上げた網のなかを探ると、蟹がまた2匹入っていた。
それを丁寧に取り出し、おじさんは網を、また海に向かって投げる。
それから数十分、ただ海を眺めながら蟹を待つ。
それを繰り返す。

なんて贅沢な時間の使い方なんだ。


(編集部註:この記事は11月に書かれたものです)

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このブログについて

東京R不動産のディレクターでもある馬場正尊が、ふとしたきっかけから房総に土地を買い、家を建て、生活を始めるまでのストーリー。資金調達から家の設計、周辺の環境や人々との交流、サーフィンの上達? まで。彼の人生は些細な気づきから、大きくそれていくことになる。馬場家の東京都心と房総海辺の二拠点生活はこうして始まった。

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著者紹介

馬場正尊