ハトの到来は引っ越しの予感

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今日は房総から離れて都心の部屋から。
自宅は泉岳寺近くのボロマンションの8階である。
洗濯物を干しているベランダにハトが飛び込んできたのだ。

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空調室外機の上にちょこんとたたずんで動かない。
まだ薄寒い空気の中、羽根を膨らませて暖をとっている。
そのぽってりした姿がまるで、
「おりゃ、動かないぜ」
と言っているようで「それならばご勝手に」と思い、しばらく放っておいた。
しかし30分近く経っても動く気配がない。さすがに心配になり、恐る恐る手を差し伸べてみてもやはり動かない。
よく見ると鑑札のようなものが引っかかって、それが足と羽の一部に傷をつけている。
膨らんで「おりゃ、動かないぜ」と、見えていた姿も「不安です、何とかしてください」と言っているようにも見えるではないか。こりゃ放っておけない。しかし、いったいどうしたらいいのだろうか?

まずは鳥の動物病院を探し始めた。
すると池袋に鳥の専門病院が見つかって、さっそく電話してみた。
ちゃんと何処の世界にも専門はあるのだ。

鑑札が羽を傷つけていることを告げると、
「それには飼主がいます。下手に治療すると器物損壊になりますからうかつに手を出さないで、飼主を探して連絡したほうがいいですよ」
とても慣れた、そして丁寧な対応だった。
説明を聞いていくといろいろなことがわかってきた。
・ハトの世界には「日本伝書鳩協会」と「日本鳩レース協会」の二つがあって、鑑札がついているのはそのどちらかに所属しているということ。
・それは鑑札の色で区別されていること。
・今回のハトくんは「日本伝書鳩協会」所属であるということ。
・鑑札の番号から飼主を特定できること。
なるほど。
さっそく「日本伝書鳩協会」に電話して飼主を聞いた。どうやら神奈川に住む松田さん(仮名)という人らしい。
連絡先を聞いて、さっそく電話。おじいさん(たぶん)が電話口に出た。
「お宅のハトが、うちのベランダで傷ついてうずくまってるんですが・・・」

そのおじいさんが口にしたのは、思いもよらないフレーズだった。
「じゃあ、宅急便で送り返してください」
え・・・、そんな乱暴なことをしていいのか!
彼曰く、日通には鳩専門の宅配サービスがあるのだと言う。
「伝書鳩が送られてどーすんだ」、というツッコミはこの際さておき、まずは日通に電話。
すると「はいはい、鳩の宅配ですね」と、まるでミカンを送るかのような当たり前のような対応が始まった。
ハトってそんなに頻繁に輸送するものなのか!?

翌日、鳩の宅急便のおじさんが、なんだかかわいい箱を持参でやってきた。それが、これ。

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専用の箱まであるのだ。空気穴は理解できるが、わざわざ鳩のプリントまで施してある。
過保護なようにも見えるが、鳩は平和の使者でもあり、このくらいは必要か。
僕らは丁寧にハトくんを箱に納め、おじさんに手渡した。
たった一日のベランダ滞在だったが、うっすらと情が湧き始めていた僕らは、いくらかの寂しさを感じていた。
行ってしまうのか、鳩よ。

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「確かに預かりました」
鳩宅急便のおじさんは、礼儀正しく挨拶をし、丁寧に箱を持って去っていった。
無事に飼主の元に届いただろうか。

実は、小鳥が馬場家のベランダに飛び込んできたのはこの日が始めてではない。
もう10年以上前になる。多摩の聖蹟桜ヶ丘に住んでいたときも青いカナリアが飛び込んできたことがあった。そいつの場合、飼主を特定するすべもなく家で飼うことになった。傷を負っているわけではなかったが、「手乗り」に仕込んであったらしく、おそろしく人に慣れていた。家族の肩から肩へ飛び移る仕草がかわいくて、しばらくそいつは我が家のアイドルだった。家のなかで完全に放し飼いにするという自由奔放さを与えたため、部屋の中がフンだらけになり掃除が大変だったのを覚えている。
僕らはそのカナリアが飛び込んでしばらくした後、中目黒に引っ越すことになる。
馬場家にとって、ベランダに飛び込んで来る鳥は引っ越しのサインなのだ。

本格的に引っ越しを考えなければいけない時がやってきた。
僕も妻も、この迷い鳩の到来で、その時が近いことを感じていた。

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コメント

こんばんは!何の気なしに久しぶりにブックマークしてあった
貴サイトを見に来たら、こんな面白いことが書いてあった〜
鳩の宅配ボックス、すごすぎる。そして、(興奮しているので)まだ読んでいないけど千葉の話、興味津々です。

改めまして、お久しぶりです。国立競技場以来ですね。
千葉、いいな〜。ウチもオットをそそのかしてみます。

連休、どのようにお過ごしですか?我が家は東京三昧、と
言えば聞こえがいいけど、ほとんどどこにも行かないの。
今度ご飯食べましょうね!

馬場さん、

はじめまして。
千葉県の逆側で宿泊施設を運営している者です。

もともと、オーストラリア人である父親が夷隅市で30年前から別荘を購入した影響で千葉には縁があります。父はその後、回りの友達を次々といすみ市近辺に誘っていて、移住した方も多いので馬場さんの周りにもいるかもしれません。
父はクラークといいます。

今内房の施設を運営している会社名がずばり「Rproject」。。。決してパクリではありません。
自分の名前の頭文字と「再生」「再利用」をもじっただけです。

いずれにせよ馬場さんとは勝手ながらいろいろな縁を感じましたので、連絡をさせて頂きました。
機会があれば千葉で会いましょう。(どっち側でも)。


丹埜

馬場さんへ
編集者の菅付です。ご無沙汰です。
実は僕も郊外に移ろうかと思っています。とにかく「地べた」がいいなと。今、食に関する本を4冊同時進行で作っているのですが、ますます地べた熱がたかまっているところです。
また馬場さんのこのコラムに大いに触発されました。
今、本がたまりにたまって(7千冊)、もう置くところがないので、それこそ、郊外にブックカフェ兼自宅でも出切ればと思っているところです。ご相談にのってくれると嬉しいです。
では。

元目白のO様

おひさしぶりです!
誰かと思いましたよ。落ち着いて思い出したら、このネタに反応する人を思い出しました。
いやあ、いつもおいしいものをありがとうございました、あの頃は。寂しい中、一瞬、家族を感じれる大切な時間でした。感謝しております、今でも。
今では別れた妻が無事に戻ってきてくれたので、家で飯が食えてます。
旦那様にもよろしお伝え下さい。

丹埜様
はじめまして。
クラークさんって、もしかして日本論の論客のクラーク? このエリアじゃ(このエリアだけではなくても)とても有名な方ですよね。
まさに房総のある側面のパイオニア。
丹埜さんの房総アクティビティにも、すごく興味があります。プロジェクトの名前もコンセプトも似てますし。
今度、お会いできたら幸いです。

菅付様
え、菅付さんが来てくれたら、一気に文化度アップなんですけど!
しかし7000冊ってすごいですね。
のんきなブックカフェ、魅力的な響きです。

房総を編集してやって下さい。
まだ文化的な未開性?も強く、湘南のように編集されていない。でも、魅力的な人々が集まり始めているような気がしてならないのです。
菅付さん、この場所の地の利は、案外交通の利便性です。フットワークが必要不可欠の僕らのような生活にはうってつけのような気がしています。東京駅まで特急で1時間。
圏央道が2年後に開通すると、成田も近い。
で、海もあって川もある。

7000冊の図書館として、
このエリアの新しいサロンとして、
また、郊外のもうひとつの家として、
来てくれたらうれしいなあ。

はじめまして、
恵比寿西にとてもかわいいその名もバードクリニック
と言う鳥と小動物専門の病院があります。ワンコしかいないので行ったことはありませんが、建物もいいですよ。昭和30年代のブロックを使った質素モダン(?)かな?建て直しにならないといいんだけどといつも思ってます。

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このブログについて

東京R不動産のディレクターでもある馬場正尊が、ふとしたきっかけから房総に土地を買い、家を建て、生活を始めるまでのストーリー。資金調達から家の設計、周辺の環境や人々との交流、サーフィンの上達? まで。彼の人生は些細な気づきから、大きくそれていくことになる。馬場家の東京都心と房総海辺の二拠点生活はこうして始まった。

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著者紹介

馬場正尊