波乗り長屋を観察する

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九十九里ビーチライン(海沿いの県道)を走っていると妙な建物が目につく。この道を通る人なら気になったことがあるだろう。のんきな田舎の風景のなかに、無機的なガラスのキューブが並んでいる。


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通称「波乗り長屋」と呼ばれているこの建物は、サーファー向けの賃貸住宅。家賃は10万弱、それでも満室順番待ちらしい。このエリアには週末のサーフィンのために部屋を借りるニーズがある。確かに、明るい隠れ家みたいで心地いい。

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この建物、細かく見て行くと、よく工夫され合理的にそして安価にできている。
象徴的なガラスと障子のキューブの部分は農業用の温室材料の転用か。普通の住宅用サッシに比べるとだいぶリーズナブルだろう。でも、きっと暑くて寒いのは避けられない。それを障子と併用することで断熱効果を得ている。他の壁はサイディングを塗装するだけで仕上げている。とても潔いデザインだと思う。
安価につくるのが条件だったとしても、果たして僕にここまで削り落とすことができたか? 軽く自分に問いかけながら眺めた。
興味津々で、またしても建物周辺をウロウロ、職業病である。住人からすっかり怪しまれた。

後日、この建物の一部に事務所を置き、プロジェクトの企画をした佐々木さんという若者と出会うことになる。そしてその出会いが僕の房総生活を大きく変えていくことになるのだが、それは数ヶ月後のことだ。


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夜になると建物自体が行灯(あんどん)のようにぼんやり光る。なかで動く人の様子が拡大されてうっすら外から見え、それがどこか色っぽい。それがまた目立つんだよね。

ある意味、房総での新しい生活を象徴する建物だと思う。
これを企画、設計した人に敬意。

しかしこれ、一体、どのくらいのコストでつくってるんだろう?
この夜は気になって仕方がなかった。
九十九里というエリアの可能性を顕在化させてくれる建物との出会いだ。

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このブログについて

東京R不動産のディレクターでもある馬場正尊が、ふとしたきっかけから房総に土地を買い、家を建て、生活を始めるまでのストーリー。資金調達から家の設計、周辺の環境や人々との交流、サーフィンの上達? まで。彼の人生は些細な気づきから、大きくそれていくことになる。馬場家の東京都心と房総海辺の二拠点生活はこうして始まった。

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著者紹介

馬場正尊